マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


ハリガネサービス 第5巻

評価:2.5

Kindle版で大人買いしたものの、絵がイマイチ好みでないのと、ストーリー展開にも不満があったので手をつけていなかった。
積み本を少し片づけたくなったので、山を崩しにかかろうと思い、再開してみた。
監督から突然ハンドボール部に行けと言われる下平。
監督は、選手に足りない部分をそれぞれ自分で考えて補わせるよう仕向けていた。
豊瀬のチームメイトの個性を掴ませながら成長のサマを見せようとしているのだが……。
なんというか全体的に絵がチグハグに感じてしまう。動きがダイナミックじゃないというか、ポージングしたマネキンに動作線をつけてるような感じに見えてしまう。
まぁしかし、もっと後になると盛り上がってくるので、とりあえず最初のうちは我慢我慢。

ヴィンランド・サガ 第22巻

評価:4.0

バルト海戦役編完結。
トルケルの怪物っぷりにはもはや驚かないが、トルフィンもやはり桁違い。
そしてヨーム戦士団を待ち受ける結末。
グズリーズの胸の内を知ったシグルドはどうするのか。
刊行ペースが遅いのだが、内容は充実していて楽しみな作品。

銀河英雄伝説 第14巻

評価:4.5

同盟クーデター編完結。
そして残ったのはトリューニヒト。絵に描いたような世渡りがうまい悪徳政治家。もはや芸術的なくらいで憎いという感情すら起きない。あっぱれ。

銀河英雄伝説 第13巻

評価:5.0

ああキルヒアイスよ君を泣く。君死にたまふことなかれ。
あのシーンは小説、アニメ、マンガで幾度となく描かれてきたが、それでも心がかき乱される。
後半の同盟クーデターも衝撃的ではあるのだが、銀英伝は衝撃的でない展開の方が少ないのだなぁと改めて思う。
名作の名作たる所以。これを乗り越えずしてこの後は語れまい。

銀河英雄伝説 第12巻

評価:5.0

リッテンハイム公が斃れ、ラインハルト陣営が一気に攻勢に出る。
メルカッツ提督に自由な手腕を奮わせないブラウンシュバイク公陣営は自滅していく。
そしてついにヴェスターラントに核を落とす暴挙に出る。
これを阻止することに失敗したラインハルトを責めるキルヒアイス
この物語最大の後悔がここに生まれる。

銀河英雄伝説 第11巻

評価:4.5

ブラウンシュバイク公たちを賊軍呼ばわりするラインハルト。
ロイエンタールとミッターマイヤーがオフレッサー上級大将と白兵戦を繰り広げる。
捕らえたオフレッサーを解放することでブラウンシュバイク・リッテンハイム陣営に疑心暗鬼のタネを撒く。
辺境に逃げたリッテンハイム公をキルヒアイスが追い、リッテンハイムは禁じ手を打って逃げ惑う。
いよいよあのシーンに向けて物語がながれていく。ああキルヒアイス

忘れられた巨人

評価:5.0

忘れられた巨人

忘れられた巨人

アーサー王亡き後の英国を舞台とした、ある老夫婦アクセルとベアトリスの物語。
古くからその土地に暮らしてきたブリトン人と、大陸からやってきたサクソン人の集落が点在する時代。
平和に暮らしていた老夫婦だが、過去に起こったあるできごとのせいで、夜中に蝋燭を灯すことを禁じられていた。しかし、それが何のためだったのか、村の人々も老夫婦にも記憶がなかった。記憶の欠落はそれだけではなく、ちょっとしたことから大切なことまで、あらゆる記憶が少しずつ欠落しているのであった。
老夫婦は、かつて生き別れた息子を探し求めて旅に出る。そして、その記憶の欠落の原因を知るのであった。
アーサー王の甥ガウェイン卿、沼沢地から来たサクソンの戦士ウィスタン、そして鬼に噛まれた傷跡によって村から追い出される少年エドウィンと出会い、旅をすることによって老夫婦は何を得、何を失うのか。
現実と非現実が入り交じる中世の風景の中で、抽象的な表現も多い。よくわからない存在が随所に登場して、ともすれば読者は置いてきぼりになってしまう。アクセルとベアトリスの会話も、たまに支離滅裂になったりする。記憶がところどころ欠落している上、たまに鮮明な記憶が蘇るのに、それを表面に出すと相手を傷つけてしまうからと、取り繕ったりするのでまた会話が混沌としてくる。
ファンタジーというベースの中にありながら、全体的に霧のかかったような雰囲気が漂い、情景が把握できない状況にしばしば陥るこの物語は、ファンタジーという枠には収まらないし、かといって文学の概念からも外れているように思える。しかし、老夫婦の旅とともに明らかになる事柄や、旅がもたらす心情の変化、さらに老夫婦が最後に到達する地点は、やはり文学的示唆が感じられる。そこまでの旅の中で幾度も繰り返される暗示によって、彼らがふたたび相見えることはないのだと、読者は確信にも似た心地になる。それでいて、作品としては結末を明示せず、読者に委ねられている。
読んだ直後は唐突な終わり方に思えてしまったのだが、時間が経つにつれて、それはそうあるべきだったと、すとんと腑に落ちるように思えた。
『私を離さないで』の中で、施設の登場人物たちが「そこにある秘密」についての話題を避ける描写があるが、カズオ・イシグロの作品の中ではこれは繰り返されるテーマのように思える。読者はわかっているのに、登場人物は気づいていない(もしくは気づいているのに気づかぬふりをし続ける)のは、ドリフのコントで言うところの「シムラ、後ろ! 後ろ!」なのだ。
忘れられた巨人』でもやはり同じで、アクセル自身も忘れてしまった過去については、読者はかなり早い段階で気づくように仕掛けられている。そして読者はそれがわかっていながら、気づかないアクセルに寄り添って旅を続けていくことになるのだ。
こういうところがカズオ・イシグロの文章の気持ちいいところなのかもしれない。