マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


小説

『ペストの記憶』 この時代を生きる我々が読むに値する記録

評価:4.0ペストの記憶 (英国十八世紀文学叢書[第3巻 カタストロフィ])作者:ダニエル・デフォー発売日: 2017/09/22メディア: 単行本カミュの『ペスト』に続いて、ペスト関連作品を読もうと思ったのはやはり、新型コロナウイルスのパンデミックという特殊な環…

『グイン・サーガ 第24巻 赤い街道の盗賊』 イシュトヴァーンの心の傷がまたひとつ

評価:4.0グイン・サーガ24 赤い街道の盗賊作者:栗本 薫発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版旧モンゴール領からパロ国境付近で潜伏するスカール一行。 グインはサルデス国境付近でユラニア軍を撃退するが、死体が動き出す怪異の裏にグラチウスがいることを…

『モモ』 息子に物語は染み込んだのか

評価:5.0モモ (岩波少年文庫)作者:ミヒャエル・エンデ,大島 かおり発売日: 2017/07/20メディア: Kindle版小学校4年生の息子への『はてしない物語』の読み聞かせ(というより朗読)が終わったので、9月からは『モモ』を読んでいた。 長い物語も、寝る前の30…

『火のないところに煙は』 リアリティホラーミステリーの秀作

評価:5.0火のないところに煙は作者:芦沢央発売日: 2018/08/03メディア: Kindle版芦沢央著。 神楽坂のとある印刷会社を舞台とした「染み」を発端として、五つの怪異が著者のもとに集まるようになり、それを一冊の本にまとめた形を取っている。 登場人物は芦…

ペスト

評価:5.0ペスト(新潮文庫)作者:カミュ発売日: 2017/03/10メディア: Kindle版アルジェリアの港町オランで1940年代のある年に、突如としてペストが流行する。 4月16日の朝、医師ベルナール・リウーは一匹の死んだ鼠につまずく。これがこのペストの流行の端…

十二国記 魔性の子

評価:3.5魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)作者:小野 不由美発売日: 2012/06/27メディア: 文庫東京の私立高校に教育実習生としてやってきた広瀬は、世間に馴染めない生徒だった頃の自分によく似た生徒・高里に妙な親近感を持つようになる。 高里は小学生の頃…

クライマーズ・ハイ

評価:5.0クライマーズ・ハイ (文春文庫)作者:横山 秀夫発売日: 2012/09/20メディア: Kindle版1985年8月の日航機墜落事故を題材に、群馬県の地方紙「北関東新聞社」で日航全権デスクを任命された悠木を主人公とした物語。 その日、販売局の安西と衝立山に登…

『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』 昭和を代表する未解決事件の告白

評価:4.0府中三億円事件を計画・実行したのは私です。作者:白田発売日: 2018/12/07メディア: Kindle版府中三億円事件を計画・実行したことを告白する手記という体裁となった小説(あえて小説と断定する)。 謎に包まれる昭和を代表する未解決事件だが、その…

『監禁面接』 主人公は冴えないおっさんなのだが

評価:4.0監禁面接 (文春e-book)作者:ピエール・ルメートル発売日: 2018/08/30メディア: Kindle版57歳で4年前に職を失ったアラン・デンブルは、医薬品の仕分け・箱詰めのアルバイトをしていたが、現場主任に頭突きを喰らわせて失職してしまう。 このことを最…

伊豆の踊子

評価:5.0伊豆の踊子 (角川文庫)作者:川端 康成発売日: 2012/10/01メディア: Kindle版昨日は熱海に出張だったんですが、そういえば『伊豆の踊子』読んだことがないなぁと思い、読んでみました。 一冊まるごと『伊豆の踊子』かと思ってましたが、短編集だった…

四つの署名

評価:3.5四つの署名 新訳版 シャーロック・ホームズ (角川文庫)作者:アーサー・コナン・ドイル,駒月 雅子発売日: 2013/08/08メディア: Kindle版シャーロック・ホームズシリーズの二作目。ホームズシリーズには長編が四作あるらしいので、『緋色の研究』を読…

そして夜は甦る

評価:5.0そして夜は甦る (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)作者:〓, 原発売日: 2018/04/04メディア: 単行本原尞のデビュー作。 レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の教科書的な探偵フィリップ・マーロウを彷彿とさせる文体と探偵澤崎が活躍する人…

忘れられた巨人

評価:5.0忘れられた巨人作者: カズオイシグロ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/11/13メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るアーサー王亡き後の英国を舞台とした、ある老夫婦アクセルとベアトリスの物語。 古くからその土地に暮らしてきたブリ…

さらば愛しき女よ

評価:4.0さらば愛しき女よ ハヤカワ・ミステリ文庫 HM 7作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版この商品を含むブログ (4件) を見る『ロング・グッドバイ』は村上春樹訳だったので、こちら…

君の膵臓をたべたい

評価:4.0君の膵臓をたべたい (双葉文庫)作者: 住野よる出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2017/04/27メディア: Kindle版この商品を含むブログ (1件) を見る活発で誰からも好かれる人気者の高校生の女の子、山内桜良(さくら)は、誰にも話していない秘密があ…

騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編

評価:4.5騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/02/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (60件) を見るようやく読み終えた。 村上春樹作品が発表されるペースにはある程度おきまりのパターンという…

ロング・グッドバイ

評価:5.0ロング・グッドバイ フィリップ・マーロウ (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者: レイモンドチャンドラー出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/01/29メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る清水俊二訳の『長いお別れ』は随分前に読んでいるのだ…

騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア篇

評価:4.0騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2017/02/24メディア: 単行本この商品を含むブログ (72件) を見る肖像画家の「私」は、3月のある日突然、3歳下の妻から一緒に暮らせないと言われ、離婚する。 物…

ボイスレコーダー

飲み会の記憶というのは、酒を飲んでしまうとほとんど忘れてしまう厄介なものだ。 楽しい時間だったということは覚えていても、時間が経つとその内容もすっかり忘れ、食べたものも忘れてしまう。 あるときいいことを思いついた。ボイスレコーダーだ。最近の…

八日目の蟬

評価:4.5八日目の蝉 (中公文庫)作者: 角田光代出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2012/12/19メディア: Kindle版購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログを見るとある女性が、生まれたばかりの女の子を誘拐し、そのまま育てていく物語……読むまでの…

新撰組血風録

評価:5.0新選組血風録 〈改版〉 (中公文庫)作者: 司馬遼太郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2015/06/26メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る新選組の凄惨な人間模様を、様々な登場人物の視点から描いた群像劇。 個人的に、新選組の人物像が…

わたしを離さないで

評価:5.0わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見るイギリスのとある施設ヘールシャムで幼年期から少…

IT

評価:4.0合本 IT【文春e-Books】作者: スティーヴン・キング出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/10/03メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る刊行された当時、図書館で予約したものの、随分待たされた揚げ句、せっかく順番が回って来たのに忙し…

生ける屍の死

評価:4.5生ける屍の死(上) (光文社文庫)作者: 山口雅也出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/03/22メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る生ける屍の死(下) (光文社文庫)作者: 山口雅也出版社/メーカー: 光文社発売日: 2019/03/22メディア: Kind…

日の名残り

評価:4.5日の名残り (ハヤカワepi文庫)作者: カズオ・イシグロ,土屋政雄出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログを見る1956年。ダーリントンホールの執事として長年ダーリントン卿に仕…

ソロモンの偽証 第I部 事件

評価:4.0ソロモンの偽証 第I部 事件作者: 宮部みゆき出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 43回この商品を含むブログ (113件) を見る1990年の冬。中学二年生の柏木卓也が学校の屋上から転落して死亡してしまう。 …

『舟を編む』

評価:4.5 (Amazon) 辞書編集に長年携わってきた松本先生と編集者荒木が、営業部の馬締(まじめ)と出会って国語辞典『大渡海』の編纂に情熱を注ぐ物語。 生真面目で不器用な馬締と女板前の香具矢の出会いは、些か現実離れしているとは思うけれど、辞書編纂…

『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン著、福島正実訳

評価:5.0 (Amazon) この作品が1956年に書かれたことを考えると、奇跡的なSF名作だといえる。 第二次世界大戦後たった10年で、自動掃除機やCADのような製図機、外部メモリの登場を予見している。ダンが図書館で捲る新聞は、画面の右下を押すとページがロール…

『その女アレックス』 ピエール・ルメートル

評価:4.0 (Amazon) 2015年度「このミステリーがすごい」海外作品のトップということで、さすがに切れ味が鋭く読み応えのある作品。グロさも満点だし、描かれる事件の状況が状況なので、イスラム国の人質事件が明らかになってからは読むのを一時中断していた…

『満願』 米澤穂信

評価:4.0 (Amazon) 「このミステリーがすごい」2015年版(対象は2014年)の国内ベスト作品。 警察官には向いていなかった新人警官の殉職を描いた「夜警」。 自殺者がやってくるという宿で発見された遺書を巡る「死人宿」。 鬼子母神伝説をテーマに描く「石…