マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『白い巨塔(田宮二郎版)4』 手術から死に至るまで

白い巨塔 DVD4
かみさんから「また白い巨塔!?」と言われながらも観てしまいます。ということで、田宮版の第4巻です。

第11回から第14回まで。佐々木庸平(弁当屋ではなく、反物屋)の胃癌手術から、死に至るまでです。

この巻で重要な役回りなのは、何と言っても柳原医局員(高橋長英)です。唐沢版の伊藤英明よりも無骨なおっさんという感じの人なんですが、これがまたいい演技してます。

最初から財前に対して腹にイチモツを抱えているような雰囲気だった柳原なんですが、ここで佐々木の担当医に指名されます。

財前教授の総回診の際、胸部エックス線写真の陰影を見て、肺に影があることを発見。財前教授に「念のために断層写真を撮った方がいいのでは?」と進言するものの、「これはテーベ(結核)の治療痕だ」と一蹴されてしまいます。

里美助教授もこのエックス線写真を見て、「手術前に断層写真を撮るべきだ」と主張するんですが、ドイツのハイデルベルグでの国際医学会に出席する準備に追われる財前は、言い訳を重ねて断層写真を撮らずに手術を行うんですね。この財前と里美の押し問答は見事でした。

手術後容態が急変しても、患者も診ずに術後肺炎だと断定し、柳原に抗生物質の投与を指示します。この辺りは唐沢版とほぼ同じ。出張中に容態はさらに悪化します。

病理検査をしたところ、ガン性の胸膜症が見つかり手遅れだということが判明します。里美は柳原に「なぜ手術前に胸部断層写真を撮らなかったんだ」と詰問します。これに対し、「あなた(里美)は助手の立場がわかってないんです」と泣き崩れる柳原。このシーンの柳原が悲壮感漂ってて壮絶でした。

結果としては、食道噴門部(胃の入り口)にできた原発性クレプス(癌)が、周囲の臓器にもリンパ節にも転移せず、肺に遠隔転移していたんですね。手術前に、柳原や里美の忠告通りに胸部断層写真を撮影していれば、これがテーベの治療痕ではなく、クレプスだということがわかったのではないか。そう里美は思うわけです。

しかし、教授に対して異論を唱えることなど論外の弱い医局助手である柳原にとっては、その主張を貫くことはできなかった、と。このあたりの心理的描写が実によく表現できていました。

唐沢版では出張先はポーランドになってましたし、さらにアウシュビッツが出てきたり、ケイ子が来たりというエピソードがありましたが、その辺りは全部アレンジです。田宮版では現地駐在員は男だし、各テーブルに電話と気送管がついている変なシステムのパブに行ったりしてます。

佐々木さんの奥さん役の中村玉緒がまたいいです。唐沢版のかたせ梨乃はなんかわざとらしい感じがプンプンしてたんですが、玉緒さんはまさに「なんだかわからないままに夫が死んでしまった」という感じがよく出てました。

ううむ。我ながらハマッてるなぁ。