マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『ハンガー・ゲーム』上

評価:5.0

ハンガー・ゲーム(上): 1 (文庫ダ・ヴィンチ) [Kindle版]@Amazon (Amazon)
近未来の北アメリカに築かれた国家パネムは、高度に発達したキャピトルとそれを囲む辺境の第1から第12までの地区で構成されていた。
キャピトルは辺境地区を政治的に統制し、それぞれの地区から12歳から18歳までの少年と少女を「贄」として集めて、1人が残るまで殺し合いをさせる「ハンガー・ゲーム」を毎年行っていた。
これは、第12地区で狩りをしながら生計を立てるカットニス・エヴァディーンという少女の物語である。
少年少女が理不尽な舞台で殺し合いを行うという設定は、日本でも『バトル・ロワイヤル』などもあるように、最近では割とよくある設定である。しかし、この作品の良さは、そういう少年少女の殺し合いにおける凄惨さを押さえて、より職業的に、より狩猟的に描くことで、ある種のスポーツのように描いている点にある。もちろん、そこでは本物の死の持つ過酷さや残忍さもいたるところに存在するが、主人公カットニスのクールな狩人としての能力と、自信無げな少女の部分、そして「カットニス・炎の少女」としての魅力によって、読んでいてそれほど心塞がれることがないような工夫がなされている。
脇を固めるキャラクターたちも個性的だ。カットニスの狩猟仲間ゲイルや、同じ第12地区の代表ピータ・メラーク、かつての第12地区の生き残りで彼女たちのコーチであり酔っ払いのヘイミッチ、スタイリストでカットニスの魅力を幻想的な手法で引きだすシナなど、それぞれに謎めいていてわくわくさせてくれる。
前半は物語の舞台となるパネム、第12地区、キャピトル、そしてハンガー・ゲームの説明をしながら、ハンガー・ゲームに向けてカットニスたちの訓練の様子が描かれる。後半はハンガー・ゲームがいよいよ開始され、怒涛のように物語が展開していく。ハンガー・ゲームが始まったら最後、一気に読まずにいられない緊迫感があるのはご想像の通りである。