マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『3月のライオン』第8巻

評価:4.0

3月のライオン 8 (ジェッツコミックス) [コミック]@Amazon (Amazon)
新人王になった桐山零と宗谷名人の記念対局。静けさの中での対局で、零は宗谷と言葉を交わすことなく対局を通して意志疎通ができることを感じていた。▲7四歩を指した瞬間、指先がピリッとしたことを、宗谷はわかっていたのだ。
対局後、東北新幹線で盛岡から東京に戻るが、台風2号の影響で阿武隈川で架線事故が発生し、零と宗谷は仙台駅で下車する。そこで零は、宗谷の耳が聴こえていないことに気付く。会長からの話によれば、「聴こえる」と「聴こえない」状態を行ったり来たりしているのだそうだ。
孤高の名人宗谷の、知られざる真実だった。
一方、棋匠戦第5局では、島田八段と柳原棋匠の熱戦が繰り広げられる。退院した二海堂と零は、大盤解説会を担当することになり、現地に同行する。
66歳でA級の柳原は、将棋に携わりながら去って行った者たちの「想いのタスキ」を背負っていた。対局は島田八段の優勢で進むが、柳原棋匠の脅威の粘りで混戦に入る。去りゆく者たちの前に広がる焼野原で、未だに焼き尽くされずに焼かれ続ける柳原の姿は、将棋という勝負の世界に長らく立ってきた棋士の誇りに見える。
対局の結果、柳原棋匠が勝ち、通算十期獲得により永世棋匠となる(66歳なので自動的に呼称も永世棋匠となるはずだ)。
ちなみに、通算十期で永世位の資格を得るのは、将棋界では名誉王座のみ(王座は日本経済新聞主催のタイトル戦で、囲碁と同名タイトルということもあり、囲碁と同じ条件となっている)。他のタイトルは通算五期(棋王のみ連続五期)で永世称号を名乗ることができる。
奇しくも、12月18日に米長邦雄永世棋聖が亡くなられた。少し柳原棋匠と重なる部分もあり、とりわけ心に来るものがあった。米長永世棋聖のご冥福をお祈りしたい。