マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『Woman』 普通の言葉を抜群のタイミングで

評価:5.0

Woman (Amazon)
2013年の日テレドラマ。満島ひかり主演。
登山家の夫を亡くし、幼い娘と息子をひとりで育てる女性・青柳小春(満島ひかり)は、市役所で生活保護受給を申請するが、肉親がいるという理由で断られてしまう。
小春には、小学生の頃に両親が離婚して以来会ったことのない母親・紗千(田中裕子)がいた。紗千は再婚し、栞という娘を生んでいた。
小春はやむを得ず紗千に会いに行くが、そこで夫・信が亡くなる日に紗千を訪ねていたことを知らされることになる。
生きるか死ぬかのギリギリでもがく女性が、失われた最愛の夫、守らなければならない子どもたち、死にいたる病、自分を捨てた母親、そして初めて会った妹の赦されざる罪にどう向き合っていくのかを描いた作品。
貧困、病、両親の離婚、夫との死別など、どのテーマも重くのしかかるが、その中で子どもたちと小春の生活感溢れるやりとりが爽やかに映る。
特筆すべきは田中裕子で、寡黙で感情を押し殺しながらも心の行き届いた迫真の演技が随所に見られる。田中裕子の幾重にも感情を練り込んだ演技が満島ひかりの悲壮さを一層際立たせている。
脚本は『東京ラブストーリー』など数々の名作を世に出した坂元裕二。言葉の選択がうまく、重さ・軽さのバランス感覚が鋭い。毎回のように印象に残る言葉が効果的にちりばめられている。派手さとは逆に、普通の言葉を抜群のタイミングで放つことで強いメッセージ性を込めるのがうまい。
「さよならを言わないのが家族だと思うんだ」
「覚悟を決めてください。死ぬ覚悟じゃないですよ。生きる覚悟です」
「あなたの人生は終わったものだと思いなさい」