マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


生ける屍の死

評価:4.5

生ける屍の死(上) (光文社文庫)

生ける屍の死(上) (光文社文庫)

生ける屍の死(下) (光文社文庫)

生ける屍の死(下) (光文社文庫)

アメリカのニューイングランドの片田舎トゥームズヴィルにあるスマイル霊園を経営するバーリイコーン一族は、当主であるスマイリーが癌にかかり、死の淵にいた。スマイリーの孫にあたるパンク青年グリンは、ずっと離れて暮らしていたのだが、遺産相続人のひとりとしてスマイリーに呼び寄せられていた。
折しも、アメリカ各地では死者が蘇るという不思議な現象が多発していた。スマイリーは遺書改変の意思を示し、一族は相続がどのようになるのか不安を抱きつつ、お茶会を開くのだが。
死者が蘇るというミステリーの常識が通じない世界を描きつつ、本格的なミステリーとして評価の高いこの作品は、「このミステリーがすごい」でも長年にわたってベストに推されている。読んでみて、その理由がよくわかった。物語の前半は、この世界を覆っている「死者が蘇る」という現象についての考察や、「死」に対する登場人物たちの考え方が披露され、その合間でバーリイコーン家の人間関係、それを取り巻く周囲の人々が、どちらかというと淡々と語られていく。
それが後半に入るやいなや、ブレーキの壊れた特急列車のように、いくつもの事件が巻き起こり、謎が謎を呼んで展開していく。
これが30年にもわたって愛されているというも納得である。