マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


Audibleの功罪

昨日書けなかったAudibleの話を少し。

2016年1月、Audibleのサービスが始まった当初は、衝撃的だった。

月1,500円で聞き放題だった。コンテンツ数はそこまで多くなかったが、サービス開始から徐々に増えてきて、契約を解除する2018年6月末までに、私自身は135冊の本を聴いた。

銀河英雄伝説』や『アルスラーン戦記』は高校生の頃以来の再読(?)だったが、電子書籍だとこの先も再読はしなかっただろうと思われる。

吉川英治の『三国志』や『私本太平記』、池上彰の『知らないと恥をかく世界の大問題』など、気軽に長いシリーズものなどを楽しむのにちょうどいいサービスだった。

私の場合、月に3~4冊、ときには5冊くらい聴いていた。イングリッシュジャーナルやキクタン(中国語)など、語学にも有用なサービスで非常に満足していた。

それが、昨年の夏に突然、サービスの改悪が実施された。改善ではない。改悪である。

それまで聞き放題だったのだが、コイン制が導入され、月に1枚支給されるコインでコンテンツを「買う」のだという。月1,500円のサービスなので、実質、1コンテンツ1,500円均一ということになる。

それまで金額設定がなかったAudibleのコンテンツは、1つにつき数千円の値段がつき、Audible会員以外も購入可能、ということになった。Audible会員以外の購入が可能になったという点は評価できるが、実質的な値上げである。恐らく、「数千円のコンテンツが1,500円で買えるから安いだろ」ということなのだが、以前からのサービスを知っているユーザーにとっては改悪以外のなにものでもない。

例えば月に5コンテンツ聴いていたとすると、1コンテンツにつき300円だったわけである。これは割安ということで、手当たり次第聴いていた。もちろん、そんなユーザーばかりだと商売あがったりだろうが、定額制サービスというのはそういうものだろう。ヘビーユーザーもいれば、ライトユーザーもいる。サービス利用の濃度の差はあれども、全体の固定収入があるので、新規コンテンツ獲得やシステム維持に回せる、そういうビジネスモデルである。

それが、サービス改変後は、1コンテンツ1,500円の買い取り制になった。月に5コンテンツ聴いていたユーザーにとっては、コンテンツ利用料が5倍になったことになる。

コインで購入したコンテンツは、退会後も楽しめる。これを持って「購入」というなのだが、正直に言ってしまえば、せいぜい一度聴くだけのコンテンツなので、一定期間しか楽しめない「レンタル」でいいし、貸し出し本数が限られている「Kindle Unlimited」のシステムでもいいと思う。

一度聴いたコンテンツを再度聴く機会は、語学以外ではほぼないし、むしろたくさんのコンテンツに触れたいと思う。もちろん、あくまで個人的な意見だが。

一応、購入したコンテンツを「返品」することでコインを「返却」してもらうことはできるのだが、わざわざ「タイトルを聴いてみたらイメージと違っていた、ナレーターの声になじまなかった場合に返品いただき、改めてお客様に合った作品をご購入いただくことを目的としています」というメールが返ってくる。

つまり、読み終わってから返品するのはこのサービスの本来の使い方ではない、ということなのだろう。さらにヘルプページには、「会員のみなさまには本特典の目的から外れて利用されているおそれがある場合は、Audibleからお問い合わせをさせていただく場合がございます」という注意書きまである。

audible-jp.custhelp.com

つまり、これまでのサービスのように、手当たり次第聴くような利用方法は望まれていない、「ヘビーユーザーお断り」ということなのだ。

確かにコンテンツの製造コストはかかるだろう。しかし、それを言い出したらNetflixなどの動画サービスは成り立たない。Amazon Prime Videoも同様だ。むしろ、利便性を高くしてユーザー数を増やしていくのが今成立しているビジネスモデルなんじゃないだろうか。

まぁたぶんそんなことは十分に承知していて、期待していたほどユーザー数が伸びず、かといってコンテンツ数を増やさないことにはユーザー満足度が高くならない、という葛藤の末の施策なんだろうと邪推する。

実は、1月からAudibleのコイン制を体験してみようと契約をしてみた。聴いてから返品すれば(返品回数制限はあるらしいが)、ほぼ以前のAudibleと同じような聞き放題で使えるのではないかと思っていたのだ。

しかし、一作品聴いた後に返品したところ、上記のようなメールが来て、一気に気分が萎えてしまった。

精神的にタフならば、Audible側から「趣旨に反している」と言われても斟酌しないだろうが、小心者としてはそういう危ない橋は渡りたくない。

そうまで言われてしまうと、せっかく返品した後に購入した作品を聴くのにも罪悪感を覚えてしまって素直に楽しめなくなってしまう。

一カ月無料ということで試してみたのだが、このまま解約してしまおうかなぁとも思っている。

とはいえ、Audibleのコンテンツ自体は素晴らしい。自動読み上げとは比べものにならない。なので、Audibleが読み放題サービスに戻るならばいつでも再開しようと思う。

あと、前から思ってたんだけど、Fire OSでAudibleが聴けないというのも致命的なのではないだろうか。欧米のFire OSだとOKなはずなのに、日本ローカルでNGにされている。この点も是非改善して欲しいものだ。