マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


ロング・グッドバイ

評価:5.0

ロング・グッドバイ フィリップ・マーロウ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ロング・グッドバイ フィリップ・マーロウ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

清水俊二訳の『長いお別れ』は随分前に読んでいるのだが、ストーリーを完全に忘れていた。
私立探偵のフィリップ・マーロウが、ひょんなことからテリー・レノックスに出会うところから物語は始まる。
レノックスはある晩、マーロウにメキシコのティファナに連れて行って欲しいと頼み込む。裏に何か事情があることを察したものの、マーロウは何も聞かずにレノックスを連れて行く。そして戻って来たマーロウは、レノックスが妻を殺した容疑をかけられていることを知り、事件に巻き込まれていくのであった。
約束と信条を何よりも大切にするタフな探偵が主人公のハードボイルド探偵小説の教科書のような作品。
村上春樹訳ではあるが、元々のテイストがそれほど変わるわけでもなく、村上春樹の文体とはまた全然違うリズム感があり、慣れるまではなかなか頭に入ってこなかった。
村上春樹の小説のリズムで読むと、テンポもスタイルも違い過ぎる。
それでいて、比喩的表現は似通ったものもあり、なんとも不思議な味わいだった。
マーロウの独白調なのだが、マーロウ自身が自分の感情の起伏を抑える気質であり、言動がしばしば想像の斜め上に行きがちなので、読者が置いて行かれる場面も多い。
自分に好意を寄せてくれる人に対してツンデレになったりする。この時代にツンデレを先取りしていたとは気づかなかった。
殴られても何事もなかったかのように振る舞うハードボイルド気質というのは、確かに考えてみればツンデレ気質と似通っていると言えなくもない。
久々に読んだチャンドラーはやはり面白かった。積ん読状態のKindle本(積んdle)の中にも『さらば愛しき女よ』(清水俊二訳版)があるので、読もうかな。