マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『サピエンス全史』下 はたして人間は「幸せ」になったのだろうか

評価:5.0

「認知革命」、「農業革命」に続いてサピエンスが迎えた革命は「科学革命」だった。
「集団的無知」を公に認めることで、サピエンスは科学研究を推し進めることができ、それを産業と宗教やイデオロギーが後押しすることで限りなく広まった。
近代に入ると、ヨーロッパの帝国主義が科学をバックアップした。これによって科学研究は進み、ヨーロッパ帝国は世界に君臨することになる。
一旦世界に広がった社会は、自由市場という名の下に資本主義を生み出していく。グローバル社会に入り、消費者部族のような想像上のコミュニティを形成するようになり、帝国は国家という枠に窄んでいく。核という人類を滅ぼしかねない発明に至った社会は、核の下の平和にたどり着いた。
だが、はたして人間は「幸せ」になったのだろうか。
狩猟生活をしていた頃の人間の幸せ度と、現代の我々の幸せ度を比べることができたとして、我々は彼らより幸せだと言えるのだろうか、と著者は問う。
さらに、今後の世界の行く末として、超ホモ・サピエンス時代を迎えるのではないかと警鐘を鳴らす。我々は、神にも等しいポスト・サピエンスを自ら作り出してしまうのではないか。それが果たしてサイエンス・フィクションの中だけの物語だと言えるのだろうか、と。