マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


アナベル 死霊館の人形

評価:4.5

アナベル 死霊館の人形(字幕版)

アナベル 死霊館の人形(字幕版)

  • 発売日: 2015/06/03
  • メディア: Prime Video

死霊館』シリーズのスピンオフ。『死霊館』の前日譚という位置づけで、このシリーズのイメージキャラクターともいえるアナベル人形に纏わるエピソードがこの作品となっている。
いやぁ、「纏わる」っていう言葉は人形だと格別な響きになる。日本人の魂に刻み込まれていると言っても過言ではないほど、人形に纏わる怪談は西洋問わず多い。
死霊館』同様、このアナベル人形も実在するものを下敷きにしているが、今回の物語自体は実在のアナベル人形のエピソードとは関係がなさそうである。
出産を控えた妻のミアに、研修医の夫ジョンがアンティーク人形をプレゼントするのが物語のきっかけ。ミアは元々人形が好きで、部屋中に人形が飾ってある。
しかしこの人形が明らかに怖い。呪いがかかっていようがいまいが、この大きさの人形をプレゼントされたら普通はヒく。しかしミアは大喜び。前から欲しかったらしい。いつの時代も女性はサプライズ好きなのだ。
その夜、隣人のヒギンズ家の夫婦が惨殺され、不用心なジョンが隣の様子を見に行く(ちゃんと不用心な伏線も用意してあるあたりが小憎らしい)と、その間に家に潜り込んでいたカルト信者カップルにミアは襲われる。このとき、ヒギンズ家の娘アナベルがこのビンテージ人形を抱いたまま自殺するのだが、これが悪魔の儀式(Conjuring)だった、というのがこの物語の根幹部分である。
ここからミアとその娘リアが不思議な現象に悩まされことになる。
起承転結の基本は日本のホラーと似たようなところがあり、不思議な現象にもそれを誘発する原因があったりする。悪魔的なものは日本人にはわかりにくいが、西洋では神の対極としてイメージしやすいのだろう。日本だと悪霊とひとかたまりにするところだが、西洋では人間の魂(元々肉体があったもの)と悪魔的なもの(元々肉体がない存在で、人に恐怖を与えることができるが、魂を奪うには人間との契約が必要などの制約がある)は完全に別物であるという考えが根本にある。そのあたりを「そういうものだ」と納得して見ていくと、ホラーではあるものの、日本のホラーのように何もかも起きる可能性があるという状況ではなく、ある点さえ守れれば困難に打ち勝つことができるかもしれない(大抵その点を守ることは難しくなるにしても)状況になる。この両者は似ているようで、恐怖の本質が違う。
死霊館』もそうだったが、スプラッター系の怖さではなく、緊張と緩和の隙を突く恐怖をうまく引き出しているように思えた。
マンソン・ファミリーが出てきたり、時代背景としてはオカルトという存在が世間に知られていく時期で、うまくその雰囲気を取り入れている。
なお、『死霊館』シリーズの実質的主人公であるエド&ロレイン・ウォーレン夫妻は今回はほとんど絡まない。そういう意味では完全にアナベル人形にスポットをあてたスピンオフである。