マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


テセウスの船 第1巻

評価:4.5

ドラマが好評だったので録画していたのだが、どうせなら原作を読んでから楽しもうということで読み始めた。
田村心は、物心ついたときから大量殺人犯の息子として世間の目から隠れるようにして生きてきた。
妻の由紀は、未来(みく)を産む際に亡くなったが、心の父親・佐野文吾の事件が冤罪ではないかと思ってノートを残していた。
心はこのノートを頼りに、父親が関わり、自分たち家族の人生を変えてしまった事件を追って北海道音臼小跡に行くのだが……。
そこで事件の直前にタイムスリップするのであった。
過去の事件を巡ってタイムスリップするといえば、三部けいの『僕だけがいない街』を思い出す。
舞台も北海道の小学校で、過去に起こった小学生連続殺人事件を巡って主人公が事件のあった過去を変えようともがく物語となっている。
僕だけがいない街』では、「再上映(リバイバル)」という特殊な能力を主人公が持っていた。この能力によって、同じスタート地点で失敗しても、もう一度コンティニューできるような感覚があった。
テセウスの船』では、第1巻を読み終わった段階ではそのような現象は起こっていない。主人公の行動が過去に起こったできごとを変えることができる、という点では同じなようである。
この類型の作品は多く、タイムパラドクスをいかにして説得力ある形で物語を完結させるかに、作者の力量が現れる。
次巻以降が楽しみな作品。