マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


クラスター対策班の指針とオーバーシュート(感染爆発)について

日本の状況を最も把握しているのはやはりなんと言ってもクラスター対策班です。

クラスター対策班の押谷仁教授の3/29時点のプレゼンテーション資料はよくまとまっていますし、チームとして日本として、何を目指しているのかがよくわかります。

https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf


クラスター対策班のTwitterも要チェックです。
上記資料の中にある21ページ目のグラフの見方、考え方については↓のツイートがわかりやすいです。


↓は昨日(4/4 21時頃)の押谷教授のメッセージです。我々が何を目指して行動変容すべきかがわかりやすく説明されていて、説得力が高いです。


また、4/4のNHKクローズアップ現代+「”感染爆発”をどう防ぐか」では、専門家会議の尾身副座長が「オーバーシュート」(感染爆発)は、「感染者数が2、3日で倍増する」という事態を指していることを示唆していました。私が知っている限り、オーバーシュートが一般の人向けに定義されたのは初めてだと思います(既に定義されていたのであればすみません)。

定義が明らかになれば、オーバーシュートするかどうかを調べることができます。ということで、調べてみました。

gis.jag-japan.com

本日(4/5)の18:00時点で、↑のサイトによれば日本の感染者数は3,708人です。その半数1,854人を超えたのは3/29(1,919人)ですから、7日かかっています。さらにその半分の927人を超えたのは3/18(930人)ですから、11日です。

3/18 930人
3/29 1,919人(11日)
4/5 3,708人(7日)

これだけ見れば、オーバーシュートは発生していないと言えます。

では東京ではどうでしょうか。同様に、感染者数の倍増にかかる日数は以下のようになります。

3/20 129人
3/26 259人(6日)
3/31 521人(5日)
4/5 1,034人(5日)

見てわかる通り、確かに東京の感染者数は毎日増えているのですが、オーバーシュートには至っていない、という結論に至ることになります。クラスター対策班や専門家委員会が「ギリギリ持ちこたえている」と言っているのは、「2、3日で倍増する」事態には至っていないということなんですね。

では、どうなるとオーバーシュート発生となるかですが……。

日本全体ですと4/3が3,196人ですので、4/6の感染者数が6,392人以上になるとオーバーシュートとなります。18:00時点で3,708人ですので、1日で2,684人増えなければ大丈夫、ということですね。昨日までが1日に350人前後ですので、これはちょっと無理がある数字です。

では東京だとどうなるか、ですが。4/3が773人ですので、4/6の感染者数が1,546人以上になるとオーバーシュートです。18:00時点で(東京の数字はこれまでの傾向からするとこれ以降増えない)1,034人なので、1日で512人増えなければ大丈夫、ということになります。昨日が118人、今日が143人ということで、これも実現可能性は低いです。

そしてもうひとつ重要なのは、東京都での検査数です。

stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp

検査実施数、検査実施人数は東京都の↑のサイトで確認できるのですが、報告が数日前なので、現在わかるのは4/2までです。実は4/2までの検査人数の最高値は4/2の469人なんですね。ただし、この検査数には、医療機関が保険適用で検査した数が含まれていないという点には注意が必要です。

東京都のこの数字が検査人数の全てであると仮定すると、感染者数/検査人数で、感染確認確率を出すことができます。検査実施人数がわかるのが4/2までなので、それまでの感染確定確率を出すと、

3/29 68人/331人=20.5%
3/30 13人/41人=31.7%
3/31 78人/145人=53.8%
4/1 66人/164人=40.2%
4/2 97人/469人=20.7%

となります。5日間の平均を取ると、322人/1,150人=28.0%となります。

仮にこの感染確認確率が今も続いているとすると、オーバーシュートしているかどうかを正しく判定するためには、512人の感染者を検出するのに必要な検査人数は、1,829人となることがわかります(512/0.28)。

つまり。

東京都の検査人数が1,829人にならない限り、オーバーシュートになる確率は限りなくゼロに近い、ということになります。

東京都の現在の検査能力については、私にはよくわかりませんが、明日いきなり1,829人の検査が可能になるということもなさそうです。ということで、少なくとも4/6にオーバーシュートに至ることはないということになります。

安心できたでしょうか?

私は不安です(汗)。

※ここでは問題を単純化するためにかなり簡易的な方法を使っています。正しい分析は専門家の方々にお任せします(汗)。

※もうひとつ補足。尾身副座長はオーバーシュートの定義を「ヨーロッパの経験を元にして作った」とおっしゃってます。ヨーロッパと日本では検査対象のスクリーニング方法が違うはずなので、同じ定義でいいのかどうか、私には判断がつきません。検査対象を絞っている日本の現状では、この定義をそのまま用いるべきではないのではないか、と個人的には思います。