評価:5.0
1970年の作品。
舞台は第二次世界大戦中のイタリア。恋に落ちた男と女が戦争という非日常に翻弄される悲恋を描く。
主人公はソフィア・ローレンが扮する陽気な女性ジョバンナ。彼女は、マルチェロ・マストロヤンニが扮するアフリカ戦線行きが決まっていた兵士アントニオと恋に落ちる。結婚することで12日間の休暇が得られ、戦場行きが遅らせられるということで彼らは結婚し、短い期間ながら恋の炎が燃え上がる。
休暇が終わる頃には、もっと長く一緒にいたいと思うようになり、アントニオが錯乱したという狂言を演じ、精神病院に入院して出征を免れようとする。しかし、これが当局にバレて最も過酷なロシア戦線に送られることになってしまう。
アントニオはジョバンナに、お土産に毛皮を持って帰ると約束してロシアに向かうのだが、第二次世界大戦が終わった後も消息が不明のままとなってしまうのであった。
ジョバンナは、アントニオの母とともに彼の帰りを何年も待つが、ある時ついにアントニオの消息を知る兵士に会う。彼は、冬のドン河(現在のウクライナ国境の東側を流れる川)を敗走している最中、アントニオが力尽きてその場に置いてきてしまったと語る。
この話を聞いたジョバンナは、アントニオの写真だけを頼りにロシアに乗り込むことになる。
このとき、ジョバンナがたどり着いたのがこの映画の最も印象的なシーンとも言える地平の向こうまで一面に広がるひまわり畑である。その畑の下にはイタリア兵士やロシア捕虜が眠るという。
ジョバンナはアントニオがこのひまわり畑に葬られたとは信じられず、イタリア人がいるという噂をたどってある村に着き、ついにその消息をつかむのだが……。
あらすじはなんとなく知っていたが、映画の最初のシーンから流れるテーマ曲もどこかで聴いたことのあるものだった。名作映画の楽曲は生活の中に定着していくものだなと改めて思ったものだ。
戦争に引き裂かれた恋人同士が、自分たちではどうしようもない時代の流れによって人生を狂わされてしまう悲哀に満ちたストーリーだが、よく考えると彼らが蜜月の時間を過ごしたのは、出会ってからわずか二週間程度のものなのだ。しかし、時間の長さと人の愛情の深さは比例しない。短いからこそ深くなることもあるのだ。
一方で、戦争に引き裂かれた彼らの間に流れた時間はあまりに長く、関係を修復させるにはもう引き返せないくらいのものが積み上がってしまっていた。あの一面のひまわりの下には、イタリア兵士たちとともに彼らの関係こそが葬られてしまったのである。
映画で撮影されたひまわり畑は、ウクライナの南にあるヘルソン州だと長年伝わっていたが、最近のNHKの取材では、ポルタヴァ州のチェルネーチー・ヤール村だったことが明らかになった。戦争という不条理に人々の生活が翻弄されるのは、75年以上経った現代もウクライナの地で繰り返されているのだという事実が心を塞いでしまう。しかし、だからこそ今、我々が観るべき映画なのかもしれない。