マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『姑獲鳥(うぶめ)の夏』 京極夏彦 心と脳の微妙な関係

文庫版 姑獲鳥の夏 (Amazon)
涼色(id:suzuiro)さん推薦図書です。というか、夏の宿題として読まされました。結局8月中には読み終われませんでしたが(汗)。

古本屋の主人にして桔梗清明神社神主(陰陽師)の京極堂と、見えざるものが見える個性的探偵榎木津、鬱気質の小説家関口(語り手)、豪放磊落な旦那肌の刑事木場、そして紅一点で聡明な京極堂の妹中善寺敦子。

このキャラクター陣を眺めてるだけでもおもろいですな。さすが涼色さんご推薦なだけはある。

物語は、陰気臭い関口が「二十ヶ月も身篭ったままの妊婦」の話を京極堂のもとに持っていくところから始まります。これに対し、京極堂は「世の中に不思議なものなどないのだよ」と答えます。

舞台は戦後の成長期。闇市はなくなったものの、まだまだ昭和ド真ん中の東京です。カストリ雑誌――戦後に乱発した怪しい大衆雑誌で、戦後に流通した安物のカストリ焼酎に倣い、ニ、三合(号)で潰れるということからそう呼ばれた――のネタになりそうな話題から、密室から消えた人物の捜査に乗り出す小説家関口。

それこそワトソンくんとホームズの関係のように、迷走する関口に的確な洞察力で謎をとく京極堂

個人的には、物語の最初の京極堂と関口との間の「心と脳に関する話」が面白かったです。なるほどなぁ、とうなりながら読みました。同時進行で祖父の死を見守ったということもあったので、心と脳についてはいろいろと考えさせられました。

とにかく分厚い本なんですが、それを感じさせないくらい読み終えた気がします。途中まで読んでた『グイン・サーガ』を放り出すくらいの勢いで(汗)。