評価:
(Amazon)野球界の常識を覆す「お金をかけずにいかに勝つチームを作るか」に挑戦したアスレチックスのゼネラル・マネジャー、ビリー・ビーンの物語。
盗塁をしない、犠牲バントをしない、そして何より重要なのは出塁率である。そんな理論をもとにビリー・ビーンが作り上げたチームが快進撃を続けていく。どこのチームからも評価されなかった選手たちを使って、金持ち球団を倒していくさまは、読んでいて非常に気持ちがいい。
以下、引用。
「この部屋にいるただひとり本物のメジャーリーガーはマット・キーオ。1980年にアスレチックスで16勝を上げ、ルーキーだった1978年にはオールスターゲームに出場した。」
そして1987年には阪神タイガースにいた。まさかここでキーオが出てくるとは。
「わたしの関心事は、野球だけ。いったいなぜだろう? それは、ほかの分野の数字と違って、野球のデータには言葉と同じ力があるからだ。
――ビル・ジェイムズ『野球抄1985』」
「野球の選手や監督はよく、新聞を利用してゼネラルマネジャーへメッセージを送る」
「ゴリアテを応援する人間は、つねに勝利を期待する。ダビデを応援する人間は――これと言って期待していないので――何かにつけて興奮する」
「ビリーをゼネラルマネジャーに起用したサンディ・アルダーソンはこんなふうに述べている。「ビリーには、人に好かれる才能がある。危険な才能だ」」
「ホームラン以外のフェア打球は、ヒットになろうとなるまいと、投手には無関係なのではないか?」
「口元をグラブで隠すようになったのはここ10年ぐらいだが、読唇術ができる野球人なんて、わたしはひとりも知らないな。それとも、最近、急に読唇術がはやっているのか?」
引用を読むだけでも、この作品の中で触れられる野球理論が少し変わったものであることがよくわかる。