マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『監禁面接』 主人公は冴えないおっさんなのだが

評価:4.0

監禁面接 (文春e-book)

監禁面接 (文春e-book)

57歳で4年前に職を失ったアラン・デンブルは、医薬品の仕分け・箱詰めのアルバイトをしていたが、現場主任に頭突きを喰らわせて失職してしまう。
このことを最愛の妻ニコルにも話せずにいたアランは、最後の望みをかけて人事斡旋業BLCコンサルティングが出していた人事副部長職の求人に応募する。
かつて人事部長をしていたアランは、最新のマネジメント理論も勉強し、一次試験を突破する。
そしてBLCコンサルティングに呼び出されたアランは、二次試験となる最終面接で、求人会社の幹部から、不採算工場のリストラ担当を選別する試験官として技量を試されると言われる。さらに、その試験は疑似監禁シミュレーションであり、採用面接対象者は監禁首謀者に指示して幹部の資質を見極めるように指示される。
常軌を逸した面接に戸惑いながらも、アランはこれが家族の将来のための蜘蛛の糸だとばかりに、ニコルの反対を押し切って全てを賭して面接に臨むのだが。

『その女アレックス』でその叙述テクニック、常識外れの展開に魅了されたが、この作品では冴えないことこの上ないおっさんが物語の中心となる。
「監禁面接」という、ある意味強烈な衝撃を与える内容をタイトルに持ってくるセンスは、邦題を付けた日本の出版社のものらしい。原題は『黒い管理職』という意味らしい。そちらの方がネタバレしてないし、より内容を現しているようにも思える。ただ、インパクトに欠けることこの上ない。しかも「そのまえ」では、アランの中高年失業者っぷりが芳しく、読み進むのを躊躇ってしまう懸念もある。
そういう意味では、このタイトルにしたのは英断だった。
実際、監禁面接が迫るにつれて物語はどんどん面白くなっていき、その後は一気に読んでしまった。