マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『セル』 ゾンビっぽいけどゾンビじゃない、それが携帯人

評価:2.5
スティーヴン・キング原作の現代ホラー映画『セル』。携帯電話がもたらす恐怖を描いたこの作品は、テクノロジーが進化する現代社会における新たな恐怖を鮮烈に描き出しています。

主人公はコミック作家のクレイ・リデル。彼には離婚した妻シャロンとの間に息子ジョニーがいます。クレイが空港でシャロンとジョニーにビデオ通話をしていると、携帯電話の電池が切れて通話が途切れてしまいます。

クレイが公衆電話からかけ直そうとしたところ、周囲の様子が一変します。人々が突然凶暴化し、他人を襲い始めたのです。まるでゾンビのように見えるこれらの人々は、携帯電話(CELL)から発せられる怪しい信号音によって精神を侵されているようでした。この異常な状況から逃れるため、クレイは地下鉄の駅に逃げ込みます。

地下鉄の車内でクレイは、作業員のトムとDJのマイクと出会います。三人は協力して地下鉄構内を逃げ延びることを決意します。物語が進むにつれ、携帯電話に操られた人々(携帯人と呼ばれる)は集合知覚を持ち、視覚や聴覚を共有していることが明らかになります。また、携帯に操られていない人々の夢に登場する赤いフードの男の存在も浮かび上がります。

『セル』は、テクノロジーの進化がもたらす新たな恐怖を描いた作品として、現代社会に生きる私たちに深く考えさせられるメッセージを含んでいます。携帯電話が日常生活に欠かせない存在となった今、あたかも携帯電話に操られているのではないかと思えないではない状況だとも言えます。この映画では、それが現実になったらどうなるのか、という発想から生まれた物語なのかもしれません。

『セル』の魅力はその独特な描写と緊張感にあります。携帯人たちの恐ろしい行動や、彼らがどのようにして集合知覚を持つようになるのかといった詳細な描写は、これまでのゾンビ映画とも少し違った独特の恐怖感を観る人に与えます。また、クレイたちが逃げ延びる過程で遭遇するさまざまな困難や、彼らの間に生まれる友情と信頼関係も見どころの一つです。

特に印象的なのは、クレイと息子ジョニーとの関係です。クレイは息子を守るために必死になり、その愛情が物語の中で重要な役割を果たします。父子の絆が強調されるシーンでは、ホラー映画でありながら感動的な瞬間も訪れます。だからといって父子の愛が映画の本来のテーマかと思ったらそういうわけでもなく、終盤のキモとなる「ネットの大統領」の登場も、唐突すぎて理解が追いつく前にカオス展開になっていってしまいます。

前半は割とホラー映画の文脈ですんなり受け入れられましたが、後半はちょっと突然どうしちゃったの、という感じ(汗)。

たぶん原作はこういう話じゃないんだろうなぁ。