マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『誰も知らない』 落ちていく子供たち

評価:3.0

誰も知らない@ぽすれん (ぽすれん) 誰も知らない@Amazon (Amazon)
巣鴨置き去り事件」を題材にした映画で、主演の柳楽優弥カンヌ映画祭で最優秀男優賞を受賞したことで話題になった作品です。

全体的に救いのない話で、現代版『火垂るの墓』という印象です。

戸籍もなく、学校にも通わせてもらえない子供たち。母親(YOU)は奔放な性格で、子供たちを置き去りにしたまま行方をくらまします。残された子供たちの生活は、長男の男の子(実際には14歳だったらしいですが、映画では小学校6年生という設定)の肩に重くのしかかります。

仕送りとしてお金はたまに送られてくるんですが、家賃や電気代、ガス代などの固定費を払うとほとんど残りがなくなってしまうんですね。

やがて子供たちの生活は徐々に荒れ始めます。家賃を滞納し、電気代や水道代も滞納してしまいます。そしてついには定期的に送られてきていた仕送りも届かなくなり……。

そこに待っていたのは、『火垂るの墓』並みの生活でした。

公園の便所で用をたし、公園の水道で水を汲む毎日。コンビニの残りのおにぎりをわけてもらい、なんとか飢えをしのぐものの、生活はどんどん苦しくなっていきます。

低予算だし言葉足らずの部分がかなりあるんですが、そのあたりを差っ引くと映画としてはなかなか見ごたえがある内容になっています。

全体的に雰囲気が重苦しく、健気な子供たちがどんどん荒んだ生活に落ちていく様を観ているのがつらくなってきます。救いのない展開に、哀しいというよりただただかわいそうだという気持ちが強くなっていく、そんな作品になっています。

しかし、実際の事件はもっと悲惨だったようです。

MURDER IN THE FAMILY ←ここの「巣鴨置き去り事件」が詳しいです。

事実は小説より奇なりと言いますが、映画でも現実でも残された長男がひたすら不憫です。まさに『火垂るの墓』です。