マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


わたしを離さないで

評価:5.0

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

イギリスのとある施設ヘールシャムで幼年期から少年期を過ごしたキャシーが、社会に出て「提供者」の「介護人」となって人生を振り返る物語。
かんしゃく持ちのトミーと、自己顕示欲の強いルーシーという友人と過ごした日々を追いながら、ヘールシャムの子供たちとそれを取り巻く大人たちの特殊な社会を描いていく。
物語が進む内に謎のベールが少しずつはがれていく。人生に対して期待し、期待することが無益だと知らされ、やがて諦めていく子どもたち。やるせない空気の中に、希望はどこかにあるのだろうか。感情というものを抑え込むことに成功しているキャシーだが、彼女の中には感情は連綿と迸っていて、それがついに行動に移される。
物静かな世界で、どうすることもできない社会に対して彼らが何を感じ、どう生きて、どう死んでいくかを坦々と描く。