マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


リウーを待ちながら 第3巻

評価:5.0

最終巻。
多剤耐性ペストの絶望的な毒性の前に、横走市はなすすべもないままだったのだが、そんな中にわずかな光明が射す。
原神の言葉が突き刺さる。

怖いんだよ。中世のペスト流行時はユダヤ人が大量に虐殺された。水源にペストの毒を入れたって言わされたりしてね……。
すぐ思い付く対象を攻撃して問題を”解決”しようとするのは500年間変わらない人間の営みさ……。
そもそも無理なのかもしれないな……。人間は解決できないことに耐えられないのかもしれない

これはまさに今の「自粛警察」のみならず、ここ最近の日本人の体質に言えることのように思える。

原神の示すペストへの有効的な対策は、つまるところ現在の日本が取っている方策、つまりクラスター対策である。
感染者を発見したら、濃厚接触者を洗い出し、ある一定期間自宅隔離させる(急変することを考えれば、自宅隔離よりホテルなどの医療従事者が容易に健康管理ができる施設の方が望ましいと我々は既に学んでいるが)。このマンガで登場するペストはどちらのタイプも、潜伏期間が短い上に、感染の有無は発症の有無で顕在化する(無症状感染者がいない)という点は、新型コロナよりもサーベイランスは容易なのだが。

このマンガを読むと、高い確率でカミュの『ペスト』が読んでみたくなってしまうだろう。
そんな人には『ペスト』から以下の引用を送りたい。

誰でもめいめい自分のうちにペストをもっているんだ。なぜかといえば誰一人、まったくこの世に誰一人、その病毒を免れているものはないからだ。

このマンガを読み、カミュの『ペスト』に興味を持ったあなたのうちにもまた、ペストという観念が宿ったと言えるのです。ようこそ、『ペスト』の世界へ。