マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』 父親リーとの対比の妙

評価:4.0

2021年公開の作品。

第1作『クワイエット・プレイス』では、壁にスクラップされた新聞記事などでさらりと触れられていた1日目(The Day)のシーンが改めて再現される冒頭は圧巻。限られた人数だけで撮影された第1作に比べて、冒頭のシーンはとても贅沢に映る。

息を潜めて音を立てないようにする登場人物たちに合わせて、視聴者もまた一緒に息を潜めるのは、ホラーの構造としてはとてもよくできている。今回もまた、無謀とでも言いたくなるような一家の行動に、時に腹を立て、時に一緒に息を潜めて見守る展開は健在だ。

前回は「家」の周辺に限られていた行動範囲が、今回は広がっていく。生き残ったのは彼らだけではなく、その先に生存者がいるかもしれないという期待感は、『ウォーキング・デッド』シリーズなどのゾンビサバイバルホラーによくある王道的なものではあるが、王道だからこそ観客もその流れに乗りやすい。

また、前作で失われてしまった父親リーの信頼感・存在感もまた、この家族にとって大切なものである。新たな登場人物であるエメットは、その父親リーとの対比が鮮明で、ある意味で期待を裏切らない。家族を守って生存の道を探し続けたリーというヒーロー的人格に対し、家族を守り切れずに自らのテリトリーにこもってしまったエメットの人格は、平凡なひとりの人間として真実味がある。

だからこそ、家族と一緒にいることでエメットの中に生まれる変化が、子供たちの成長と相まって、心に深く染みるのだ。

低予算で作られてヒットした前作、そして売れたことで予算が大幅に増えた続編として作られた今作だが、家族の成長ヒストリーとしてもよくできていて、個人的には非常に楽しめた。毎度のことながら、無謀すぎる各キャラクターの行動には怒りすら覚えるのだが、それがなくてはこういうハラハラする展開にはならないので、仕方ないのだろう。

どうやら次回作も製作されることが決定しているので、また彼らの行動にヒヤヒヤするのを我慢しながら観てみたいと思う。