マンガ、映画の感想をベースに、たまにいろいろ書いてます。


『息子の部屋』 淡々と描かれる喪失

評価:3.5

息子の部屋@ぽすれん (ぽすれん) 息子の部屋@Amazon (Amazon)
精神分析医のおじさんが主人公という映画なので、非常に地味に始まります。海辺をジョギングするヒゲ面メガネのおっさん。

そして淡々と描かれる日常。妻、息子、娘の4人家族。カウチに横たわり自分の世界を切々と語る患者たち。息子がアンモナイトの化石を盗んだ疑いで校長先生に呼び出されるエピソード。妻は息子が盗んでないと信じ、父はそれを確かめようとします。

どこにでもある普通の家族。そんな質素で仲のよい家族に突然舞い降りてくる不幸を淡々と描いた作品です。

大切な人の命が唐突に奪われたとき、家族はどのようになるのか。あのとき電話がかかってこなければ、あのとき急な往診に応じなければ息子は死ななかったのではないか……そう悔やみ続ける父親の心境が、リアルに淡々と語られます。

全体的に非常に地味なんですが、その分リアルに感情の起伏が現れている気がします。もし自分がこういう立場だったら……ということを想像しながら観ると、いろんなことを考えるきっかけになる秀作です。

イタリア語の歌しか聴かない父親が、初めて買った英語の歌がまたいいんですわ。ラストのスタッフロールもこの曲が流れるんですが、ついついじっくり聴いてしまいました。「フォーリン ダウン ダウン ダウン……」歌詞は暗いんですけどね(笑)。