評価:
(ぽすれん) (Amazon)この映画を語るにはまず『マルコヴィッチの穴』を観ておく必要があります。
『マルコヴィッチの穴』の脚本家チャーリー・カウフマンが、次回作の映画として、『蘭に魅せられた男』の脚本をする、という話。ちなみに『蘭に魅せられた男』はスーザン・オーリアン著の全米ベストセラーノンフィクションだそうです。翻訳されているので日本語でも読めるようです。
(Amazon)
で、その脚本が映画になったのがこの『アダプテーション』という映画なんですね。『蘭に魅せられた男』という作品は、幻の蘭といわれる「幽霊蘭」をフロリダ州保護区から盗み出す男の話。単純に映画にするには、山もドラマもない作品なんですね。しかし魅力がある。チャーリー・カウフマンはこの脚本を書き上げるのに苦悩する……という話です。チャーリー・カウフマン自身の独白的映画という構成になっています。
映画の中でその映画自身の脚本が組み立てられるので、ちょっと不思議な感覚です。最初からいろんなシーンがブツ切りで現れ、時間軸もフィクションもノンフィクションもバラバラなので、難解といえば難解な映画になっています。
いわゆる「映画のお約束」をことごとく逆手に取った展開です。中盤までほんとうに何のヤマもなく展開しちゃうし。
実際、途中までは実にくだらない映画になってしまったなぁと思いながら観てました(汗)。
しかし、中盤から終盤にかけての展開はさすがチャーリー・カウフマンと唸らせられます。『蘭に魅せられた男』の著者のスーザン・オーリアンがよくこの作品を許したなと思います(笑)。映画化というより、パロディです。
ニコラス・ケイジは『マッチスティック・メン』のときより役作りのために随分太ったようです。双子の脚本家を演じているんですが、やっぱりこういうちょっとイカレタ役柄はピッタリハマりますね。
映画としては、かなりギリギリのラインを狙った作品になっているので、評価は大きく割れると思います。駄作と切り捨てる人もいるでしょうし、素晴らしいと絶賛する人もいるでしょう。『マルコヴィッチの穴』が好きなら是非観ないと損ですが。懐かしい顔ぶれもいろいろ登場してますしね。